ひねくれ作家様の偏愛
「私がずっと自分の仕事でいっぱいいっぱいだったから、その間に好きな女の子でもできちゃったかなって」


「だーかーら、どうしてそういう思考になるんですか?」


俺は玄関からリビングにずかずかと戻る。問い詰めると、涙をこらえて顔を真っ赤にした千弥さんがうつむいていた。


「昨日……何にも……してくれなかったし」


昨日って……一日千弥さんがうちで寝暮らしてしまった件についてか?


「何もって……それは千弥さんが疲れてたからで。ゆっくり休んで欲しいって思ったんですよ。他意はないです」


「……私は……智くんと過ごすために有休とった……。忙しくて二人でいられなかった分、少しでも補いたくて……だけど……」


涙だけじゃなく恥ずかしさで真っ赤な顔をしている千弥さん。
俺はふと思い出す。

もしかして、昨日の『頭撫でて』って言うのは……この人なりに誘ってたのか?

俺が精一杯我慢している横で、千弥さんは俺が欲望のままに抱き締めてくれることを待っていたのか?

だとしたら、なんてわかりづらいんだろう。
この人の求愛は。

恋愛自体が初めての千弥さんは、アピールの仕方もわからなかったのだ。
触れて欲しい。抱き合いたい。
そんな欲求をストレートに言えず、遠まわしに誘いをかけていたんなんて。
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