ひねくれ作家様の偏愛
彼女の告白に、今までの嫉妬で埋まっていた心がすうっとラクになった。

なんだ、千弥さんの心は俺のことでいっぱいじゃないか。


俺は歩み寄ると千弥さんの身体を抱き寄せた。


「昨日、俺とこうしたかったんですか?」


千弥さんが腕の中で頷く。

恥ずかしいのか俺の顔を見ないで、胸に顔を埋めている。
俺はその顔を強引に持ち上げキスをした。


「キスや、その先も、期待してたんですか」


顔を見下ろしながら問うと、千弥さんがいっそう顔を赤くする。
困惑した表情で、俺の指をのがれようとする。

逃がすまいと顎をつかみ、もう一度キスをした。今度はもっと深いキスだ。


「智くん……」


唇をわずかに離し、千弥さんが俺の名前を呼ぶ。
世界で一番心地いい響き。


「こんなに愛しい人を嫌いになるわけないでしょう?」


千弥さんの黒い髪をかきわけ、額にキスをする。
髪が伸びた彼女はショートカットから、出会った頃のようなボブになっていた。

懐かしくて嬉しくなる。
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