ひねくれ作家様の偏愛
きみが指名できる話じゃない。
だけど、そんなことを聞いてくれるヤツでもない。


「じゃあ、もう少し『ともし火』に寄って。読者を意識できない小説じゃダメだよ」


言い切った分、私の言葉に反論できない海東くんはむくれた顔でそっぽを向いた。
ちょうどよく目の前にランチセットが届く。

私はマトンカレー激辛にナン。
海東くんは甘めのバターチキンをさらに甘くしてもらっていた。
私にばれないように指さして注文していたけれど、ちゃんと見えていた。
差し入れも辛いモノはNGだって、私はちゃんと知っている。

弱味、見せてくれればいいのに。

なんて、絶対口にできないことを心で呟く。
海東くん相手じゃ、私だってできないもん。プライドの高い彼には余計できないに決まっている。
私たちの妙な拮抗関係ももう4年以上になる。


「打ち合わせ、しようよ」


私はナンをちぎりながら語りかける。
< 42 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop