ひねくれ作家様の偏愛
「読んでください」


「持ち帰るね」


「今、ここで。最後まで。俺、待ちますから」


「そんなに長くお邪魔できないよ」


私は落胆を滲ませないように、事務的に答える。
過去や思うところを全部押し込めて、今日ここに来たのは、彼が私を頼ってくれるかと思ったからなのに。

私は海東くんに頼られる価値はない。


「明日は日曜でしょう?何時間かかってもいいから読んでください、ここで!」


海東くんはしぶとく食い下がる。
彼は私がどう思っているかなんて関係ないんだろうな。
私の感情なんて、昔から無視だもんな。

それに勝手に振り回されているのは私。


「わかった。きみは休憩してていい。これから読むね」


私は腰を据え、原稿を読み始めた。
彼の作り上げた世界を理解する作業に没頭する。

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