ひねくれ作家様の偏愛
海東くんの創作物に触れるとき、いつだって、幸福だったはずなのに。

彼と原稿を挟んで戦うようになってから、私は自分の立場を測りかねるようになった。
ファンとしては、彼のどんな作品も愛しい。

しかし、担当としては違う。
これじゃ売れない。会議には通らない。
海東智の復帰作がこれじゃ、先はない。

必然、私の口からは彼を否定する言葉ばかりが出るようになり、海東くんの頑なな態度はいや増すばかりだ。

本当は私なんか、彼の担当を降りた方がいい。
私情は入りまくりだし、彼に妙な敵愾心も持たれている。
だけど、海東くんの方が私を解放してくれない。

彼だって、私といて楽なはずもないのに。


3時間かけて彼の原稿を読んだ。
読み終えて、ダブルクリップ留めした原稿をそろえてテーブルに置く。

窓辺で外を眺めていた海東くんが悠々と戻ってくる。


「どうですか?」


「前回のものと、またまるで違うね」


私は表紙から数枚をペラペラと捲りながら言う。

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