ストックホルム・シンドローム
「…あんたみたいなやつ、愛せる訳ないじゃない。私を監禁した、最低野郎。ストックホルム症候群なんて知らないし、あんたなんかにあげる愛情は一欠片もないわ。バカバカしい。いい加減にして」
脂汗が浮き出てくる。
霞んで行く視界の中に立つ、沙奈。
「正当防衛になるよね?だって誘拐されて長い間 監禁されて、何回も暴力 奮われたんだから。わたし、悪くないじゃん。このままだと殺されるかもしれなかったから刺した。立派な正当防衛よ」
薄れていく景色。
僕は目を瞑る。
そうか。
やっぱり、沙奈は、
僕を愛していなかったんだ。
…それでも。
「…あいしてる」
呟いた声は、君に届いたかな。
意識が、消えていく。
愛して、いた。