誰よりも、君が好き
「なにつったってんの?
早く帰るぞ。」
匠くんのそんな声が聞こえるまで、
私はその場を動けずにいた。
でも、ふと我に帰ってみる。
「い、いやいや!!
おかしいでしょ!!
なんで私が匠くんと帰らなきゃいけないの?」
私が焦りぎみにそう問うと、
匠くんは後頭部をポリポリとかいて
チッ、と一度舌をならした。
「下僕は黙ってついてきてればいいんだよ。」
「…また、命令なの?」
「…あぁ。」
匠くんは無愛想に答える。
チラリと彼を見てみるけど、
数秒見つめたままでもその視線が重なることはなかった。
…いったい、なにを考えているの?
不思議に思うけど、
匠くんはしかめっ面をしていたから、
声をかけるのは止めておいた。
「…行くぞ。」
そして、
匠くんのその声を合図に、
私たちは一緒に学校を出た。