いと。
ーチリンー
「いらっしゃ………」
…くそ。今一番会いたくないヤツが来たな。
「…そんな顔していいのか?曲がりなりにも客だぞ、オレは。」
いつものようにカウンターに座り、わざとらしく俺に笑ってみせるこいつ…戸澤と言ったか。
「…どうぞ。」
ジントニックを差し出し営業スマイルを向けると、戸澤はグラスに手をつけず背もたれに体重を預け、こう言った。
「…何があった?」
その表情は無表情というより真剣だ。
「………………」
『何か』があったことはわかってるのか。
「…あいつの周りに誰か付けてるのか?
なんでそんなことまで知ってる?」
いつになく俺はイラついていた。
愛の陰にある父親やこいつの動きが憎らしくも思えた。
「…さぁ?オレはただ今日店に行ったら帰ったと言われただけだ。
…随分早い時間にな。
で、ここに来てみたらおたくのその顔。何かあったと見て不思議はないだろう。
彼女の父親は調査をつけるようなえげつないこともしてるかもしれないがオレは関係ない。
………『アイちゃん』はどうした?」
「……………」
それはまるで本当に、愛の父親なんて知らないとでも言う口ぶりだった。
…じゃあこいつは誰の意向で動いてる?
「その顔。…ふっ。オレは誰の差し金か……ってとこか。言ったろ。オレはただ彼女を貰うだけだ。」