いと。
その声にビクリと動きを封じられ、声のする方向を向くと視線が離せなくなった。
そこから出てきたのは、父だった。
「辞表を書けと言っただろう。そんなこともできないのか。モタモタするな。
……その男もそろそろ切り時だな。なぁ、多久島くん。」
冷たく見下す視線を私だけじゃなく薫にまで向けられ、思わずカッとなる。
「…っ!薫までそんな目で見ないで!娘は死んだと思ってって言ったはずでしょ!?
こんな所に来て何!?もう私を捨てて!二度と顔を見せないで!」
拳をギリギリと握り、言い放つ。
「愛!落ち着け!」
薫は私の前に回り込み、抱きかかえるように視界を塞いだけど、頭に血が上った私はもう父に我慢がならなくてその腕を振り払おうと力任せに踠いた。
「離して薫っ。私もう我慢できない。この人に飼い殺しにされてきた過去も、こうやって都合のいいように現れて気持ちを真っ黒にされるのももう嫌なの。
我慢できない許せないの。
今日で終わりにする。だから離してっ!」
「愛!ちょっと待て!」
渾身の力で薫を振り切ると父に向き直る。
すると父は………最高に嫌味な表情で笑っていた。
「…ふっ。飼い殺しか。そうだったな。
でも……もう終わりだ。お前は私から解放される。顔を合わせることもないようにしよう。」