いと。

思ってもみないセリフが薫の口から出たことに思わず一瞬固まってしまった。

「……え?何?何でそうなるの?」

タオルケットで胸を隠し、ガバリと起き上がって薫を見下ろすと、そこにあったのは切なそうな不安そうな表情。

「…っ!?どうしてそんな顔…してるの?私は薫のことそんな風に思ったこと一度もないよ?

いつも守られてるし支えてもらってるし、薫がいなかったら私はっ……」

「じゃあどうして結婚の話を一度もしなかった?

仕事を辞めろって言われてたことを言わなかった?

だからあんなに調子が悪かったんだろ。いくら大嫌いな父親でも姿を見せてケンカになったくらいであんなに調子を崩すなんてって思ったんだ。」

その声はいつもの薫では絶対出さない冷たい声だ。冷静に話してはいるけれど、きっと心の中はそうじゃないはずだ。

「………そ…れは…。」

ぎしりと音を立て、二人で寝られるようにと買ったセミダブルのベッドを抜けた薫はボクサー一枚を纏っただけの姿で寝室を出た。


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