いと。
「…はぁ。」
父に会うのは好きではない。というか、息子ではなくまるで使い勝手のいい部下のような扱いにはほとほとウンザリしてきている。
下りのエレベーターに乗りぼーっとしていると、ふと浮かんだのは初めて見た愛の満面の笑顔だった。
あのミニチュアのティーカップは…それこそ印象付けるためのちょっとした小道具だった。
フランスに行ったついでにその辺で適当に買ってきただけの。
でも……それをあんなに素直に喜んで受け取ってくれた。その笑顔は本物で決して営業がかったものではなく、思わずかわいいと思ってしまった。
あんな風に喜ぶなら…
「もっとちゃんと選んで、もっといいやつにすればよかった。」
後悔の呟きは、瞬く間に開いた扉の向こうに放たれていった。