いと。

彼は帰り際、美味しいと言った私のためにビーフシチューを持たせてくれた。

「いいんですか?」

「もちろん。で、その器返すついでにまた来てよ。

もっと色々飲ませてみたいし。」

ニコニコと笑顔を浮かべる彼は本当に楽しそうで、逃がさないと言わんばかりにポンポンと私の頭を撫でた。

……また来いってこと?

「…………酔わないですよ?」

「ははっ。知ってる。」

「少食ですし。」

「それも知ってる。

友達の店だと思って気軽に来てよ。

いつでも待ってる。」

その響きはとても甘くて、またうっかりドキリとしてしまった。


『いつでも待ってる』なんて…言われたことないかも。


その言葉は思いの外、心に残った。

彼の笑顔とともに。



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