いと。
「あの、こんにちは。」
帰り道、ふと声をかけられ振り向くと、そこにいたのはあの女性だった。
「…あ、こんにちは。」
正直、もう誰にも会いたくなかったけど営業スマイルを無理やり引っ張り出してきて顔に貼り付けた。
「よく会いますね。あなたとはご縁があるみたい。」
クスリと笑いながら髪を耳にかける仕草はとても女性らしくて………、同時にやっぱりどこか攻撃的なような挑戦的なような含みを感じた。
「そうみたいですね。……今日はお子さんはお留守番ですか?」
いつも一緒のあの子が見当たらないことをなんとなく聞くと、柔らかい彼女の表情はピクリとほんの一瞬冷たいものになりすぐにまた笑顔に変わった。
「ええ。今日は保育園なんです。
あの子ったらパパに会えるのが待ち遠しくて仕方なくて…、ふふ。早く一緒にやりたいことがたくさんあるみたいで、毎日ウキウキなんですよ。
パパだって子供のそばにいられる方が幸せですよね。
だから……………」
「…え?」
笑顔を棘の含まれた真顔に変え、視線で攻撃される。
次の瞬間聞こえたのは、意外な言葉だった。
「だから、私たちの幸せをジャマしないでほしいの。」