いと。
愛から『会いたい』とラインが送られていたころ、俺は戸澤と会っていた。
「すんなり別れないと彼女はどんどん追い詰められる。例え今回オレとの話を逃れたとしてもいずれは違う相手が用意される。
……まぁ、必ずオレがもらうけどな。」
戸澤の口調は相変わらず抑揚がなく顔も無表情で、それがごく自然のことだとでも言いたそうな雰囲気に俺は随分とイライラした。
「…! お前…っ!」
「事態はあんたたちが知らない間にどんどん進んでる。
…誰か、あんたに会いに行かなかったか?」
………結衣のことか。
「じゃああいつをよこしたのはお前か!?」
テーブルの上で握った拳に力がこもる。
ここがポイントインだったなら、俺は間違いなくこいつを殴ってる。
その拳をじっと見つめながら、戸澤は小さく息を吐いた。
「いや、それは『アイ』の父親だろ。オレの所にはそう報告が来てる。
でも……その女が言ったことは事実だ。
『アイ』の父親はあんたの身辺をくまなく調査し、結衣という女とその子供にたどり着いた。
正真正銘あんたの子供だ。疑うなら調べればいい。
おそらくその女に何かしらの条件をつけて動かしたんだろう。そしてあんたを探していた女にとってもそれはそれは好都合な話だった…ってところか。」
「……………。」
そうか。だから俺の店の場所がわかったんだ。愛の父親が情報を提供したから。
でも………子供に責任があることには変わりない。
「……どうする?あの親子を捨てるか?養育費だけ払って。
現実を見ろよ。あんたが守らなきゃならないのは自立した一人前の女か?
それとも…、血の繋がった無力な幼子か?
言ったろ?指輪は他の女に渡せって。」
「…っ!」
「……………なぁ。」
戸澤の視線は遠い。かと思うと一瞬で真剣な顔つきになり、少しだけ苦しそうな表情になった。
「…なんだよ?」
「………なぁ、あいつをオレにくれよ。
ちゃんと…大事にするから。」
「……………。」
『必ずもらう』と言っておきながら何だ?この顔は。
まさかこいつ……愛を……!
「……お前じゃ無理だよ。書類上の表面からしかあいつを見ていないお前じゃ…幸せになんてできない。
もういいだろ。俺は忙しい。子供のことはちゃんと結衣と話をする。」
話を終わらせようと席を立つ。戸澤はただ…
「あの女の子、あんたに似てるな。」
そう言ってまた無表情に戻った。