いと。

トランクから目眩の薬を出し、ゆっくりとキッチンに立って手で水を掬い、薬を流し込む。

グラスはもうないから。

グラスだけじゃない。

家具も家電もインテリアも服や靴も…薫に貰った物も全て処分した。

ここにあるものはどれをとっても薫との思い出ばかりで…いっそ消してしまおうと思い何ひとつ残さなかった。

苦しかったけれど…薫の痕跡を消すしか、薫から離れる方法が思いつかなかった。

昨夜まで身につけていた服や下着だってもうゴミにまとめた。

今、身につけているものは数日前に買ったものだ。

トランクの中身も全て新品。当面必要なものや服を最低限揃えて詰め込んだ。

薫の思い出が染みていない、無機質で真っ白な私。

少しずつでもいいから…この真っ白な私を、強くしていかなきゃ。


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