いと。
「愛!」
そう声をかけると心許ない足取りはようやく一瞬止まった……………のに。
「…………………。」
震える拳をきゅっと握った愛はまたスタスタと歩き出した。
…チッ。意外と強情だな。
でもここで逃すわけにはいかない。
早足で歩み寄り、その肩に手をかけて動きを止める。
「…っ!やだ!離して!」
「…っと。」
思い切りよく振りほどかれた手。
愛の表情は、怒りと憎しみが混ざってた。
「何食わぬ顔して私に近づいてこんな風に好き勝手しようなんて。
私はあなたを愛すことはない。
だから結婚もしなっ……」
「なっ!…おい!」
がくんと膝が崩れた途端にへたり込むその身体を背中に腕を回して支える。
「はな…して……っ!やだ!キライ!」
苦しそうに絞り出す声。
そんなにオレが嫌か。
「…はぁ。動かない身体でどうするって?」
「…やぁっ!…や…だっ。」
「いいから!大人しくしてろ!」
無理やり抱き上げて車の助手席に座らせる。
思うように身体の動かない彼女はようやく観念したのかそのままくたりと目を閉じた。
…『あなたを愛すことはない』……か。