いと。

「愛!」

「へっ!………何!?離して……わっ!」

背後から急に伸びてきた手に室内に引っ張り込まれ、バランスを崩して二人で床に座り込む。

抵抗する暇もなかった私は気づくと後ろから両手で抱きかかえられるような体勢になっていて、耳のすぐそばで呆れたような安堵したような溜息が聞こえた。

「…はぁ。何やってんだよ、お前。

そんなとこでフラついてたらびっくりするだろうが。」

「びっくりって……!ちょっと外の空気吸ってただけです!

それより離し…て…っ、え!?」

そこではたと気付いた。

私の格好。これって………

「なっ!?…なんで服がっ!?」

昨日はリネンのワンピースを着ていたはずなのに。

これってどう見ても男物のシャツ!

しかも倒れ込んだせいで裾はめくれ上がり下着が見える寸前だ。

「お前、今頃気づいたの?あのままじゃ寝苦しいだろ。

誰が着替えさせたと思ってる?

鳥ガラみたいな身体かと思ったけど意外に出るとこ出てて安心したよ。

脱がせるのは夫婦の特権だから、文句は聞かねー。」

「ふ…ふざけるのもいい加減に…っ!」

急激にぐるりと視界が回る。

冷や汗が身体の中からそこらじゅうに顔を出してきて、私を攻め立てるように指先を一気に冷やす。

もう……嫌だ、こんな身体。

「おい……愛?…しょうがないな。

興奮して声を荒げるから神経が刺激されるんだろ。大人しくしろ。」

動かなくなった私に気づいた彼は軽々と抱き上げてまたベッドへと降ろした。

「………冷えてる。温めないと。食事と薬も…だな。今、用意…」

「要らない。だから、ほっといて。」

思いの外、攻撃的な響きが出てしまう。

「……………。」

メガネのブリッジを直しながら向けられていた視線が少しだけピクリと動く。

「もう、いい。この身体も、要らない。

こんなポンコツの不要品、何の価値もないしジャンク以下だよ。

………捨てるから、外に出してよ。」

目を閉じたまま呟くように伝える。

「産まれたことそのものが私の罪なんだから………もう、いい。

一生道具として償えと言われるくらいなら、もう消してしまいたい。」


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