いと。
「大丈夫。もう、苦しむなよ。」
低く囁く声。
ふわりさらりと、髪を優しく撫でられる感触。目元や頬を拭う指。この手つきは…薫じゃない。
それなのに、柔らかくて優しい…?
とくんとくんと…聞こえるのは、心臓の音?
それに、抱きしめられるあったかさと…ほんのり甘くてスパイシーな…香り。
「……だ…れ………?」
少しずつ、意識が浮上する。
「お前…頭ヤバいだろ。オレ以外いるわけないだろ。」
棘のある言葉と裏腹に、響く音は…優しくて甘い。
「………オレって…………っ!?」
その状況に目を丸くする。
ベッドの上で横抱きにされ、その胸にもたれかかるように眠っていた私は………彼のものであろうシャツを着ていて、とんでもなく無防備だった。
「…や…だっ!離し………きゃぁ!」
「あっ!バカ!」
逃れようと身体を離すと思わずベッドから落ちそうになり、結局またその腕の中に…引き戻されてしまった。
「……………ご、めんなさ…い。」
「お前さ、自分の状況もっとちゃんと考えたら?
まともじゃないのに急に身体を動かすな。
毎回毎回、拾わされるオレの身にもなれ。昨日から何度同じことしてんだよ。
本気でバカだろ。」
「なっ!…最低。離して下さい。」
回された腕を解き、静かにベッドを降りる。
「…立てるのか?」
浮遊感は抜けないけれど、少しずつなら動けそうな身体に力を込めて歩いてみる。
前回倒れた時よりは、回復が早いみたいだ。
これ以上弱いところは見せられない。
「平気です。…だから、ここを出ます。」