いと。

……どうして私は、シャワーを浴びているんだろう。

あの後、動けるならシャワーを浴びて食事をしろと、タオルとトランクを渡された。

熱めのお湯は少しだけ、頭の中をクリアにしてくれる気がした。

「…………あ、そういえば…っ!」

大事なことを、思い出した。

今日は…私の部屋にあった薫の荷物が彼のマンションに届くはずだった。

部屋着やコーヒー、食器。捨てるに忍びない彼のものたちを送り返した。


………別れの手紙と、指輪とともに。


これで、薫との全てが完全に終わる。

薫は、私に気兼ねなくあの子を愛せる。


…………あの女の人と一緒に。


「………終わったんだ。全部。……前を、向かなきゃ。」

シャワーを顔に当て、目を閉じる。

浮かぶのは…………愛しい薫の………


大好きな、甘い笑顔。


「………薫…………っ、かお…る。」

堪えきれずにシャワーが流してくれるままに涙を流す。

「薫……ごめ………っ。…薫………。」

ただただ、泣くしかできなかった。



こうして私は、



たったひとりの………



愛しいひとと、永遠に決別した。


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