いと。
シャワーからあがると、戸澤さんはスーツ姿でソファでコーヒーを飲んでいた。
「えっと、シャワー…ありがとうございます。」
「…あぁ。まだフラフラしてるぞ。メシ食って薬飲め。」
「あ…いえ。これ以上はご迷惑かけられません。
……戸澤さん。さっきも言いましたけど、私ここを…」
「ストップ。」
私の言葉を遮り、コーヒーマグを持った彼は無表情のまま私の前に立ち、視線を向けてきた。
こうして向かい合うとヒールを履いていないせいかいつもより身長差と威圧感を感じる。
「…な…んですか。」
「オレはこれから仕事に出る。帰りの時間はわからん。お前は食事をして薬を飲んで寝る。動けるならこの家の中なんでもどこでも好きにしろ。…オレの部屋以外は。
………それだけだ。」
言いたいことだけ言い終えるとそのまま持ったマグをキッチンで洗い始めた。
「な…!そんな話聞けません。私はここを出ます。
あなたがいない間にでも勝手に……っ!」
キッチンかごにマグを置いてリビングに戻る彼に詰め寄ろうとすると、
「こんなひとりでロクに歩けない身体でか?」
足元のふらつきをごまかすためにソファの端についていた腕を持ち上げられ呆れたように薄く笑われる。
「…平気です。あなたの世話になるくらいなら道端で倒れて死んだほうがマシ。
言ったでしょ?元々要らない人間なんだから消えたって構わない。
だから離して。」
腕を振り払い、トランクを引いてリビングを出ようと歩き出すと、
「…きゃぁっ!?」
いきなり後ろから軽々と抱き上げられてしまった。