いと。
「なにす…っ!やっ!?」
乱暴にドサリと降ろされ揺れる頭の中と咄嗟に瞑った目。
背中に伝わるのは革張りのソファの質感。
両腕は…頭の上でまとめあげて掴まれているのか、自由がきかない。
………しまった。これじゃあ………!
「や……だ……!」
震える唇はめまいのせいか恐怖のせいか。
必死に開けた視界には私を見下ろす無表情の顔があった。
「お前も自分は要らないんだろう。消せばいい。捨てればいい。お前自身の人生はこれで終わり。
それで満足だろ?
オレはお前が捨てた残りのお前の時間を拾ってやるよ。オレが使ってやる。
…決定な。これでお前はオレのもの。」
「なっ!…や……っ!触らないで!」
顎を掴まれ、無理やり視線を合わされる。
「……っ!い…た……!」
次の瞬間降ってきたのは首筋へのジワリとした痛みだった。
これ…って。
「………ふっ。いい眺めじゃん。乱れる短い髪も悪くないな。
……オレの所有印もよく見える。」
痛みの走った部分を冷たい指先で触れられピクリとすると、戸澤さんはクスクスと静かに笑って頬を撫でてきた。
「ふぅん、触っただけでそんな反応するんだ。いい拾い物だな。」
掴んでいた両腕を解放し、離れると彼は少しだけ乱れたスーツを直し、スマホを手に取った。
「………車を。」
ほんの一言告げると通話を切り、私に向き直る。
めまいと突然の出来事に力が抜けて動けなくなった私は起き上がることさえできなくて…ただ、涙だけは見せるまいと歯をくいしばるだけだった。
「…動けないくせにここを出るって?
状況は冷静に見ろよ。今のお前は自分をどうすることもできないだろうが。
昨日も言ったはずだ。…10日はここにいろ。その間に身体を治せ。話は回復してから聞いてやる。
ずっと張り付いてた探偵は俺が見張るという条件で解除してもらった。
感謝しろ。
でももし勝手に出て行ったらお前の父親に通告して回収してもらう。いいな。」