いと。
「……………。」
薬の眠気に勝てずに寝てしまってどれくらい経ったのか、ふわりと漂った甘くスパイシーな香りに気づいてゆっくりと目を開けた。
「………あ、れ………?」
あの香りは確かに戸澤さんのものだったけれど、その姿はそこにはなかった。
リビングにいたのは花井さんだけで、仕事を終えたのか既に帰り仕度をしていた。
「…あら、奥様!今ちょうど曜さまがお戻りになられていたんですが、またすぐに出られて…。
ふふ、奥様が気がかりでムリして時間をお作りになったようですよ。
お加減はいかがですか?」
……戻ってた?私の様子を見に?
……………逃げ出してないかってことか。
家政婦さんに見張らせてるくせにわざわざ来るなんて………。
「…はい。大丈夫ですよ。花井さんはお帰りになるんですか?」