いと。

「はぁ…。」

冷たい風が吹きつける冬の空気の中、トボトボと駅への道を歩く。

見上げた空には月も星もない。

真っ黒い空が広がるばかりだ。

心に浮かぶのは………

「薫さん……。」

彼のことばかり。

最も見られたくない部分を見られてしまった。

父は薫さんに何て言った?

『お前はまた自分のオトコにそう呼ばせてるのか』

『知らないのか。本当の名前も。』

『所詮君も『愛しい人』ではないと言うことだ。』

「………………っ。もう…ヤダ。」



薫さんに気づかれてしまった。



私が『アイ』じゃないと。



ずっと本当の名前を隠してきたと知ったら…



あなたはどんな風に思うだろうか。


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