いと。
ーチリンー
定休の店にカウンターだけ電気を点けてひとり待つ。
夜も更けた11時頃、戸澤は現れた。
「………待たせたな、悪い。」
これっぽっちも悪いと思ってはいない声。
その表情は、いつもと変わらなかった。
「………愛はどこだよ。」
メガネのブリッジに手をかけるその飄々とした顔を見た途端に思わず詰め寄ってしまう。
「………………。」
「おい!あいつを返せ!」
頭にはすっかり血が上り、止まらなかった。必死だった。……焦っていた。
でも………
「なぁ。あんたなんか勘違いしてないか?」
戸澤の目は冷静だった。…というか、冷ややかだった。
「なに?」
「あんたから離れるのを決めたのは彼女自身だ。
あの部屋にあった家具から食器から服まで全てをきれいさっぱり捨ててあんたの思い出や記憶を全部消したんだ。」