いと。
「…おい。………おい。………愛!」
「……っ!」
急に名前を呼ばれてはたと気づいた。
「あ…れ?眠って……」
7時…くらいまでは記憶がある。食欲がなかったけど薬だけはと思って冷蔵庫にあったトマトジュースでそれを流し込んだ。
その後ソファに座って………やだ、みっともない。こんな姿を見られたなんて。
「す…みません。寝てたみたいで…。
というか、愛って呼ばないでください!
もう誰も、その名前で呼ばせるつもりないですから。」
ひとりで強く生きていくのに、呪われた名前なんて引きずりたくはない。
「……妻を名前で呼んで何がわりい?
それよりメシ食ったのか?薬は?
顔色はいくらかいいけど、少しは動けるのか?」
私の意見なんか聞きもしない戸澤さんはそこまで言うとスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイを外しながらキッチンへ向かった。
「………はぁ。食べてないだろ。」
無機質な声が響く。
その視線はミネストローネがまだ少し残っている鍋に注がれていた。
「いえ、ちゃんといただきましたよ。今朝は。美味しかったです。
花井さんに聞きました。お料理なさるんですね。意外でした。」
「……………食べた?これで?」
……そうか、知らないのか。
「あ、えーと…私、極端に少食なので。」