いと。
先日いくらか降った雪は積もることなく一旦全て消えてしまった。
今年は温かい方らしい。でも…コート、手袋、マフラー。それがないともう外には出られないくらい冷え込んでいる。
それでもこの湖に足を運ぶことはやめられない。
この奥底にお姫様がひとり過ごしているかと思うと……寄り添っていたいと思ってしまう。
「…わっ!」
波打ち際の砂浜に立っていると突風のように吹いてきた風に怯んで後ずさりしてしまう。
それと同時にばさりと肩から落ちてしまったバッグに砂が掛かった。
「…あ~あ。」
塩分を含まない、海よりサラサラしている砂を払い、大切に抱えて湖面をボーッと眺める。
薫との別れを決めた時はあんなにきっぱりと全てを消せたのに………
あの日、駅の公衆電話でかけた番号が書かれたメモはどうしても捨てられずに今も手帳に挟まれている。
曜がはめてくれた指輪も………御守り代わりに、ネックレスにしてかけている。