いと。
「何か食べてく?今日はビーフシチューあるよ?」
「あ、久しぶりに食べたいかも。」
薫のビーフシチューはやっぱりとっても美味しくて大好きで、幸せだった。
ここにも用意してくれている私専用のカフェオレボウルで出してくれるビーフシチュー。
こんなに美味しいのにたくさん食べられない自分が不思議なくらい。
最近は特にだ。
最近といえば…薫は私がここに来るとさりげなく食事をすすめてくる。
私はというと…薫が出してくれるもの以外は………やめよう。自分が嫌になる。
「アイちゃんってホントに少食だね。小動物みたいで可愛いなってよく思うけど…。」
久しぶりに来たというお客さんのテーブルに顔を出しに行った薫にチラリと視線を向けながら雄太くんは私の正面に立ってそう口を開いた。
「……けど、なに?」
話の先が気になりスプーンを止めて彼の方を向くと、雄太くんはわざとらしく私に顔を近づけて囁くようにこう言った。
「食べてるアイちゃんを見てる薫さんの笑顔って時々蕩けそうだよ?
しかもアイちゃんのことも食べたそうな顔してる。」
「………………!? 何言って…!」
一気に頬の赤くなる私を見て満足したのか、雄太くんはクスクス笑いながら顔なじみのお客さんの元へ行った。
……もう!なんてこと言うのよ…。
ってか、あれ絶対に私じゃなくて薫がターゲットだったよね…。
「………愛?そんなに顔赤くして、何言われたの?」
「…わっ!薫…。」
あからさまに不機嫌そうな顔をした薫は自分がからかわれていることなど全く気づいてないようで、私がちょっかい出されているのを見て飛んできたようだった。
それまで薫がいたテーブルのお客さんだって『仕方ないな』と言わんばかりに苦笑いを浮かべている。
「……薫、雄太くんの顔みてよ。」
半分呆れ顔の私の指摘を受けて薫がそちらの方を向くと雄太くんはわざとらしく『さぁね』という表情をしていて、隣にいた常連さんはクスクスと笑い声を立てていた。
「…っ!あーいーつー。」
お客さんには聞こえない声でそう呟いた薫の耳は真っ赤で…
閉店してからの雄太くんがちょっと心配になってしまった。