いと。

もう一つの資料、『眞城 愛』と書かれたファイルを開く。

そこにあるのは数枚の写真。

LINKのエプロン姿、スーパーでの買い物中の姿、薫と腕を組み楽しそうに笑う姿、そして…バーの前で薫に抱きしめられている姿。

「………。」

パタリとファイルを閉じ、もうひとつ…独自に身の上を調べた調査書を眺める。

「子供嫌いの父とは幼少期からほぼ一緒に暮らしたことはない。母親も病気のため産後一年で実家へと戻される…か。」

つまり、両親の愛情には恵まれずにずっとひとりで生きてきたってことか。

それでも、愛はそういう身の上に起こってきた不幸を全く感じさせない。

なぜか名前こそ本当の呼び方は薫にしか許していないようだが…、真っ白な百合の花のように凛としてしなやかな笑顔はとても好感が持てた。

仕事を心から楽しみ努力していることが、資料なんて読まなくても数回来店するうちよくわかった。

過ごしてきた環境を思えば、卑屈にすらなっていてもおかしくないというのに。

それはつまり、愛が自分の人生を努力して幸せなのものに作り上げてきたということだ。

多久島が愛に惹かれた理由が…なんだかわかる気がした。


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