2・5次元の彼女
景斗が前を向いて歩きながら、ちらりと私を横目で見た。

「でもユウさん、試着終わったとき、ちょっと微妙な顔してたよね?
ひょっとして、似合ってない?」

意外と鋭く人の顔色を読んでいたらしく、私はうっ、と口ごもる。

「似合ってない訳じゃないけど……戸惑ってたっていうか。
いつもの景斗らしくなかったから……
あ、でも、格好良いのは本当だよ?」

私は慌てて手をパタパタと振ると、景斗は少しほっとしたようだった。

「これで、イリーナより格好よくなれたかな?」
そう言ってジャケットの襟をピシっと正す。

何それ、イリーナに対抗意識燃やしてたの?

私は思わずぷっと吹きだした。
「ひょっとして、昨日言ったこと、気にしてた?
私がイリーナと、本当にデートすると思ってたの?」

堪え切れなくて声を出して笑ってしまった。
景斗は怒るかと思いきや、昨日とはうって変わって余裕の表情だ。
態度まで大人の男然としていて、洋服とは、こんなにまで性格を変えるものかと感嘆する。

景斗は少しだけ私の耳元に顔を近づけて、呟いた。

「もう、ユウさんが別の誰かとデートするのを見守るなんて、たくさんだからね」

どきりと。
再び胸が騒いで、私は景斗の顔を見上げた。

今日の景斗はどうしてしまったんだろう。
動揺させるようなことばかり囁くから、次の言葉に、態度に、びくびくとしてしまう。


路地を曲がると繁華街の喧騒が消え、賑やかな明かりも届かなくなる。
辺りに誰もいなくなったところで
景斗が突然、私の腰に手を回した。

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