2・5次元の彼女
徐々に鼓動が静まって、心地よさだけが身体を占拠する。

少しだけ喋る余裕が出来た私は、頬を寄せている景斗へ問いかけた。
「本当に、どうしちゃったの景斗。らしくない」

彼は困ったように笑った。
「やっぱり、そうかな」
手の力を緩めると、私の顔を正面から覗き込む。

「昨日、ユウさんが先に帰ったあと、イリーナと飲みなおしたんだ。どんな話してたか分かる?」

突然問いかけてきた景斗に、私は目を丸くして「ううん」と答える。

彼は目を瞑って言った。

「イリーナ直伝、女性の口説き方」

「は!?」

「女性を落とすには、大胆さと余裕が大事なんだって。
上手くできてたかな?
正直もういっぱいいっぱいで、手が震えそうだ」

言った途端、私の腰に回された腕がふるふると震え出した。
よくよく景斗の胸に手を当ててみると、私よりもずっと激しい鼓動。
やっぱりあれは私の鼓動だけじゃなかったんだ。

彼は、はぁぁぁぁあぁぁああと大きなため息をついた。

「ああ、もうだめだ。
僕の方が緊張して倒れてしまいそうだ」

そう言うと、私の身体に回した腕をするりとほどいた。

景斗は膝に手をついて、深く息を吐いてうな垂れる。
「僕、こういうの向いてないよ……」
そう言ってそのまましゃがみ込んでしまった。
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