オフィスの華には毒がある
「あの、メイク濃い目の……?」


「そうです、嶋本主任の」


ぐ、と喉の奥で変な音がする。イコール主任、ってくらい定着しちゃってるんだ、という事実が何だか重い。


何とも答えようがなくて環の言葉を待つ。


「なんかね、意外と悪いオンナっぽいんですよ!主任とつきあってたはずなのに、最近別の人との目撃情報もちらほらあるんです!」


……いや、なんすか。主任とつきあってた、って。初耳なんだけど。噂だけじゃなくて?

あんな、ダサい人のどこがいいの?
いやでも、待てよ……あのフェロモンさんも、別バージョンの方の主任を知っていたとしたら……?

ぐるぐる回る自分の思考に酔いそうになる。

『だから、こっちモードの時はその呼び方やめろって言っただろ』

今朝見た悪夢がよみがえる。


いいオトコぶるな、バーカ!!と一蹴してみるも、なんだか気持ちは落ち着かなくて。


すっかり放置の環に慌てて『へー』なんて相づちを打ってみるけど、環は気にもとめず、営業の○○さんもデートしたらしいだの、噂話に夢中で。
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