立花課長は今日も不機嫌
人事部へと向かう途中、探していた背中を見つけて足を速める。
「立花さん!」
私の呼び止めにゆっくりと振り返る。
眉ひとつ動かさない、目の色を変えるわけでもない、いつもの立花さんの表情からは、何も読み取れない。
こうして立花さんを探してやってきてしまったけれど、いざ面と向かうと何を言ったらいいのか分からない私。
「用がないのなら行くぞ」
「あ、あのっ」
背を向けかけた立花さんを呼び止める。
言葉も用意できていないというのに。
立花さんにじっと見据えられて、更にセリフが思い浮かばなくなる。
「……辞令、見ました……」