立花課長は今日も不機嫌
「答えろ」
強い言い方に、肩先がビクンと揺れる。
――でも、答えるわけにはいかない。
「言えません」
なんとか言葉を発する。
呼吸困難になる寸前、酸素を胸いっぱいに吸い込んだ。
そのおかげか、はたまた違うのか。
脳に行き渡った酸素が、私に指令を下す。
「……立花さん、前に“罠だった”って言いましたよね?」
思い切って尋ると、立花さんが目を見開く。
「それが、今回のことだったんですよね?」
この状況下で立花さんにそんなことを聞けるなんて、自分でもなかなかの度胸だと思ってしまう。