立花課長は今日も不機嫌
立花さんは頷くわけでも、YESと言うわけでもなく、ただ黙って目を逸らしたのだった。
「……立花さん?」
「全て知ってるって顔だな」
壁にもたれて腕を組む。
そうしてしばらく考え込むように床に目線を下ろしたままでいた立花さんは、不意に私を見た。
その瞳には、ついさっきまでの力強さも鋭さもなくて、それがかえって私を不安にさせる。
「立花さん……?」
「ツメが甘かった俺のミスだ」
「え……」
質問を投げかけたのは私だけれど、立花さんの口から直に聞けるとは爪の先ほども思っていなくて、思わず間抜け顔で聞き流してしまった。
「俺の負けってこと」