立花課長は今日も不機嫌
「だって、素敵な男の子、いなかったんですもの。だから、出てきちゃったの。あ、そうだ。杏奈ちゃん、また入江くんのこと――――あら、何事?」
突然、近くで聞こえたキーッ!という車のタイヤが軋む音。
言葉を止めて視線を泳がせた良樹さんにつられて、私も音のした方へ顔を向ける。
――と同時に。
視界が眩しいほどのライトに遮られた。
――何!?
咄嗟に手を光にかざした瞬間――
「危ない!」
立花さんの叫ぶ声と共に、身体が一瞬宙に浮く。
――え!?