秘密の記憶は恋の契約
(まさかほんとに元カノなんて・・・)


完全に動揺した私は、「そうなんですか!」と妙に元気のいい声を張り上げてしまった。

笑顔で言ったつもりだけれど、もしかしたら、恐ろしくひきつった表情をしていたかもしれない。

「・・・」

「・・・」

それっきり、しーんと静まり返る部屋。

山崎さんは「まずい」と感じたのか、考え込んで次の言葉を探し出す。

「あー・・・ええと・・・学生時代、とかですか?」

その質問に、佐々木さんは一瞬考えるような間をおいてから、「そうだね」と言ってにこりと笑う。

「出会った頃は、恭・・・綾部くんが高校生で、私が大学生だったから」


(えっ?高校生と・・・大学生!?)


年上の美しい彼女・・・こんな人が、綾部くんの高校時代の彼女だったのか。

やっぱり、私とは明らかに違う恋愛遍歴を、綾部くんは送っている。

「バイトの先輩後輩だったの」

笑顔で「私が上ね」と付け加える佐々木さん。

「そ、そうですか・・・」

もう、相槌を打つくらいしか私には出来そうにない。

そこで、今まで黙っていた綾部くんが、しびれを切らしたように「すみません」と口を挟んだ。

「そのぐらいで止めませんか。今日は仕事に来てるので」

「あっ・・・そうね。つい懐かしくって・・・。昔話をしている場合じゃないよね」
< 100 / 324 >

この作品をシェア

pagetop