秘密の記憶は恋の契約
岩下さんが来れないとわかった時点で、メールすることだってできたはず。

せめて名刺交換の時に言うべきだったのにと、基本的な配慮が出来なかった自分が恥ずかしくなった。

「・・・すいません。オレも言うべきだったんですけど」

頭を下げる私の隣で、綾部くんがぼそりと呟く。

すると佐々木さんは「いえ」と言って首を振った。

「私も、突然の再会に驚きすぎちゃって、すっかり忘れてたから」

「ふふっ」と笑う佐々木さん。


(怖いって聞いてたけど・・・なんか、すごく優しいんですけど・・・)


それは・・・ここに綾部くんがいるから?

事前に抱いていた印象との違いから、私は妙な疑いを持つ。

「それに、特に問題なく進んだからね。綾部くん、ピンチヒッターって感じが全然しなかったから」

「ね?」と同意を求められた山崎さんも、「そうですね」と笑顔で答える。

「その年で主任なんてすごいじゃない。仕事、出来るんでしょう」

「・・・別に・・・」

ムッとした表情で、会話をかわす綾部くん。

「本当に・・・見違えるくらいかっこよくなっちゃったな。やっぱり・・・恭一と結婚すればよかった」


(・・・えっ・・・?)


結婚すればよかったって・・・。

佐々木さんが、妖しく微笑む。

私は動揺して、おもむろに綾部くんのことを見上げてしまった。
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