秘密の記憶は恋の契約
苦しげに歪んだ彼の顔。

こんなに動揺する綾部くんは、初めて見た。

「・・・なんてね。あ、山崎くん、このことは旦那には内緒ね」

「え?あ、はい・・・」

左手の薬指に光る指輪。

佐々木さんは既婚者で・・・ご主人は、同じ会社の人なのだろうか。

「約束だよ?」

人差し指を唇に当てて、山崎さんを見上げる彼女。

女性の私でも見惚れるような色っぽい仕草に、思わず目を奪われてしまった。

「じゃあ・・・ごめんなさいね、梅村さんも。驚かせちゃったでしょう。

とりあえず、これからよろしくお願いしますね」

「あっ、はい、こちらこそ・・・」

私の動揺も、佐々木さんに伝わってしまったのだろうか。

窺うように微笑みかけられた私は、取り繕った笑顔を見せて、アクアシュガーを後にした。







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