秘密の記憶は恋の契約
(でも・・・)


『やっぱり、恭一と結婚すればよかった』


佐々木さんの言葉は、きっと、深い意味を持っている。

多分・・・綾部くんは佐々木さんに、プロポーズしたことがあるのだろう。

そうじゃなければ。

結婚の話が出たことのない昔の恋人に、わざわざあんなこと、言ったりしないのではないだろうか。

だからきっと。

佐々木さんは、ただの過去の恋人じゃない。

彼にとっては特別な・・・将来を考えていた、とても特別な存在のひと。

言葉とは裏腹に落ち着かない様子の私に、綾部くんはさらに言葉を足していく。

「オレはいま、美咲のことが好きだから。昔の彼女に会ったところで、別になんとも思わねえよ」

もちろん、彼は私を安心させるため、そう言ってくれたのだろう。

けれど私はその優しさを、受け止めることは出来なかった。

「・・・なんとも思わないって・・・めちゃくちゃ動揺してたじゃない。

そんな嘘、つかないでいいよ」

強がるように、声が震えた。

私はいま、きっとものすごく動揺している。

昔のことだから気にするなって、そう言ってくれたのに。

いまは私のことが好きだって、彼はそう言ってくれているのに。

・・・それなのに。

過去に嫉妬した私は、綾部くんを責めるような言葉を放った。
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