秘密の記憶は恋の契約
「・・・もちろん、驚いたことは事実だけど。本当にそれだけ。

おまえだって、仕事で元カレに会ったりしたら驚くだろ」

「それは、そうかもしれないけど・・・」

「それに。向こうはもう結婚してるんだ。今更どうこうなるわけもないだろ」

それは多分、深い意味なく出た言葉。

けれど私は「結婚」という二文字に、さらに過剰な反応をした。

「じゃあ・・・佐々木さんが結婚してなかったら、違ってたかもしれないの?」

「・・・は?」

これ以上は言ってはいけない、頭の片隅で、冷静な私がそう語り掛けるのに。

心を乱している私は、言葉が止まらなくなっていた。

「だって・・・佐々木さん、綾部くんと結婚すればよかったって言ってたよね?

あれって、綾部くんがプロポーズしたっていうことでしょう?

もしいま佐々木さんが独身だったら・・・心が動いたりしたんじゃないの?」

「・・・・・・そんなわけないだろ・・・」

完全に、NGワード。

「プロポーズ」という言葉を発した私に、綾部くんは、見たこともないくらい、怖くて冷たい顔をした。
< 108 / 324 >

この作品をシェア

pagetop