秘密の記憶は恋の契約
「今は、おまえのことが好きだって言ってるだろ・・・。

だから、誰と会おうと、何を言われようと、気持ちが変わったりはしないけど。

でも・・・美咲がそこまで言うんなら・・・。

オレのことが信じられないなら・・・これ以上は、オレももう何も言えない」

そう言うと、綾部くんはフイッと私から視線を背け、早足で先へ先へと進んで行く。


(な、なによっ・・・!)


取り残された私は、複雑な思いで、熱くなった目頭にぎゅっと強い力を入れる。


(そんな態度、とらなくたって・・・)


「・・・」

そうだ。私だって、どこかでそれはわかってる。

綾部くんは、悪くない。

ただの・・・私のヤキモチだ。

過去の恋人に会ってしまったのは、不可抗力に他ならない。

佐々木さんが口にしたことも、それをどうにも出来ないことも、彼の責任じゃないって、そんなことはわかってる。


(わかってるけど・・・)


見限るように歩き出した彼の態度が、悔しくて悲しくて・・・私はとても、淋しかった。
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