秘密の記憶は恋の契約
けれど。


(う・・・)


途中で、ピタリと足を止めてしまった。


(そうだ・・・綾部くん、隣の席なんだっけ・・・)


同期で同じ部同じ課に所属するのは、私と綾部くんだけだ。

彼はすでに仕事を始めているようで、パソコン画面を見つめながら、カタカタとキーボードを打っていた。


(なんか落ち着いてる・・・。今朝のこと、気にしてないのかな・・・)


様子を窺うように、彼の横顔をそっと見つめる。

「かっこいい」と言わざるを得ない容姿に、トクン、と大きく胸が高鳴った。

綾部くんは、王子様のような涼しげでキレイな顔立ちをしている。

180cmくらいあるのだろうか、高い背丈にすらりと伸びた手足。何をしていても雑誌から抜け出してきたような特別な存在感を醸し出している。

どちらかというと童顔で、「地毛だ」という栗色のサラリとしたヘアスタイルも手伝って、第一印象は何となく軽そうに見えてしまうのだけど。

実際は真面目で、同期の中では一番しっかりしていて仕事も出来る。


(同期で役職が付いているのは、綾部くんだけだもんね・・・)


彼は主任を務めている。

仕事は出来るしかっこいいしで、社内の女の子や取引先の女性からも、当然人気があるわけだけど。
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