秘密の記憶は恋の契約
「うん・・・」

近い未来の約束を交わす。

それでもまだ名残惜しくて、私は握ったままの綾部くんの手を、離さないように握り直した。

すると彼は気持ちを汲み取ってくれたのか、次の言葉を私にかける。

「・・・土日、せっかくの休みなのに悪いな。会えなくて」

「ううん・・・前からの約束だもんね。きっちりお兄ちゃんしてあげて」

明日明後日は、綾部くんの弟さんが泊まりに来るとのことだった。

綾部くんはお父さんお母さん、弟さんの四人家族で、綾部くん以外は皆、他県の実家に住んでいる。

弟さんは現在高校3年生で、いまはまさに受験生。

横浜にある大学が第一希望ということで、今週の日曜日に開催されるオープンキャンパスに参加するため、前日から綾部くんの家に泊まりに来て、一緒に行くことになっているそうだ。


(その方が安心だし、二人でゆっくりできるもんね)


「まったく・・・アイツも、高3にもなったら一人で行けって思うんだけど」

ブツブツ文句を言いながらも、年の離れた弟さんは、やっぱりほおっておけない様子。

「ふふっ。いいじゃん、たまには。あんまり会えないんでしょ?兄弟水入らずで過ごしてよ」

「・・・いい年した男同士だぞ・・・。なんか気持ち悪いな・・・」


(とか言って。しっかり面倒みそうだよね)
< 216 / 324 >

この作品をシェア

pagetop