秘密の記憶は恋の契約
「はい。ご主人も同じ会社なので、他言しないようにってずっと頼まれてたそうなんですけど・・・でも、さすがに仕事どころじゃない状況になって、なんとか説得したそうです。

『仕事は代われる人がいるけど、お腹の母親は誰にも代われないだろ』って」

「・・・」

「それで、佐々木さんもやっと気づいたらしいんですね。今はとにかく、仕事よりも赤ちゃんのために、身体を気遣う時期だって」

そして、つわりが落ち着くまでの休暇を申請。それがつい先日、土曜日のこと。

無事受理された後の日曜日、山崎さんの元に報告の電話があったそうだ。

「休日なので、会社側の対応もバタバタになってしまって。

佐々木さん自身も、なんとか月曜日まではって・・・梅村さんたちの仕事だけは、きちんと終わらせたかったみたいですけど。

やっぱり身体が大事だからって、ご主人に説得されたみたいです」

「・・・そうでしたか・・・」

つわりの症状は、私にはわからないことだけど。

仕事に厳しく、基本クールと言われる佐々木さんだ。

一人で不安を抱えこんで・・・体調の変化を悟られることのないようにって、きっと、かなり辛い我慢をしながら、普通を装って仕事をしていたのだろう。


(・・・私も、全然気づかなかったな・・・)


考えながらうつむくと、山崎さんは柔らかな口調で次の言葉を私にかけた。
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