秘密の記憶は恋の契約
山崎さんが、表情を隠すようにメガネのブリッジを押し上げた。

その指の隙間から、一瞬だけ陰りが見えた気がしたけれど。

指先を離した後の山崎さんの表情は、優しくてとても穏やかだった。

「今日も・・・梅村さんが心配で、ここまでついてきたんですよね?」

どこか眩しそうな眼差しで、山崎さんは私の隣に目を向けた。

綾部くんは真っ直ぐ前を見据えながら、「はい」と短く頷いた。

「・・・そうですか。・・・・・・ああ、資料、これですよね」

「あ・・・はい」

目を逸らし、ふっと笑った山崎さんが、机上にある資料を手に取って、そのままページをパラリとめくる。

「ありがとうございます。

お二人で確認されたなら、もう大丈夫でしょう。後でゆっくり目を通しておきますので。

なにかあったら、そのときにまた連絡させていただきます」

切り上げる口調。

これ以上、私が話せることは何もないと思ってしまった。

綾部くんは、何か言おうと口を開きかけたけど、そのままきゅっと口を結んだ。
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