秘密の記憶は恋の契約
金田さんと一緒に会社に戻り、5階フロアに足を踏み入れたのは、ぴったり午後の始業開始時間だった。

「よかったね。セーフ!」

金田さんはそう言って席に座ると、「会社の前で美咲ちゃんと会っちゃって」と隣の席の花田さんに話をしている。

「友達とランチしてたんだって」という声は、既に仕事を始めている綾部くんにも聞こえているはず。


(金田さん、ナイス!)


これで、私のランチ時のアリバイは多分成立。


(・・・って、別に疑ってもないと思うけど・・・)


さりげなく綾部くんに視線を向けつつ、それに気づかれないよう私は静かに自席に座る。

「梅村」

「は、はいっ!?」

綾部くんに名前を呼ばれ、私はまた席を立ちあがりそうになってしまった。

「これ。コンビニに売ってたから」

そう言って、綾部くんはキャップの下におまけの付いたジャスミンティーを、「やる」と言って私に差し出す。

「その眠たそうなヘンなネコ、おまえ好きだろ」

「え?」

よく見ると、おまけのマスコットは、最近私がはまっている『ぐーすかにゃんこ』のものだった。
< 24 / 324 >

この作品をシェア

pagetop