秘密の記憶は恋の契約
「ねえ。すっかり二人の世界だわ」

岩下さんのツッコミに続き、金田さんがにやにやしながら私と綾部くんを見る。

そこに、課長がうろうろと席に迷っていた田口くんも引き連れて、「ここいいかー」と言って私たちの席に一緒に座った。

これで、ここのテーブルは定員いっぱい。

「主役がなんで端っこにいるんだよ」

「いやー、綾部たちが座ってたので」

課長の問いかけに、岩下さんが笑顔で返事。

「だって、二人の恋バナ聞きたいじゃないですか!!」

「ん?ああ!まあな、そうだな!」

オジサン二人で、ピンクい会話で盛り上がる。

せっかく席を離れた田口くんは、困ったような諦めたような顔で、私の対角線上におとなしく座った。

「まあ・・・とりあえず、酒がきてからゆっくり聞こう」

という課長のひとことで、ピンクな話題は一旦停止。

それぞれにビールが届き、立ち上がった岩下さんが復帰の挨拶を済ませると、運ばれたおつまみを食べながら、テーブル毎におしゃべりタイムが始まった。

お腹が空いていた私は、目の前のポテトコロッケをとりあえずひとつゲットする。

「んじゃ、そろそろ聞くか!」

岩下さんが、飲んでいたビールジョッキを座卓に置くと、くるりと巻いたおしぼりを手に、それを私と綾部くんに向けた。
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