秘密の記憶は恋の契約
和室に入って来るや否や、美乃里が「プププ」と笑い出す。

私は動きをピタリと止めて、我が妹を軽く睨んだ。

「・・・うるさいなあ。いいでしょ」

「久しぶりに出来た彼氏だもんねー。浮かれてるのがよくわかる」

仲はいいしもちろんかわいく思っているけど、憎たらしいのは相変わらず。

「・・・そういう美乃里は?彼氏と花火行かないの?」

恥ずかしさを隠すように、私は話題を美乃里に振る。

すると彼女は「ああ」と言って、ため息交じりに話し出す。

「博司、今日は仕事なんだって。早く終わったら見れるかもだけど。どうかなー」

「あ・・・そっか・・・。見れるといいね」

「うん。早く終われって祈っとく」

美乃里の彼氏の博司くんは、私と同じSEだ。

職場は違えど、休日勤務の多忙はわかる。

どうか本人のためにも美乃里のためにも、博司くんの今日の仕事が早く終わりますように。

「雨、降らないといいね」

「うん・・・。毎年花火の日って、天気あやしいんだよね」

ぽそりと呟いた美乃里の言葉に、私はカーテンを開けて外を見る。

天気予報は、確か一日曇りだったはず。

微妙なグレーの空を見ながら、天気がもつといいなと思った。
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