秘密の記憶は恋の契約
すると彼は首を傾げて、私の顔を覗き込んだ。

「・・・どうした。固まってるぞ」

「え!?あ、ご、ごめん!その・・・綾部くんも浴衣だって思わなくて・・・」

「花火は浴衣だって言っただろ」

「まあ、そうだけど・・・」

私が視線をそらしてうつむくと、綾部くんは「ふーん」と言ってにやりと笑った。

「あんま見惚れんなよ。イタイカップルだと思われるぞ」


(!?)


「そ、そういうわけじゃないよ!意外だったからびっくりしただけ!!」

「はいはい」


(・・・もう!)


かっこいいのは時に厄介。

図星をつかれたのが悔しくて、私は頬を膨らます。

すると彼は優しく笑って、膨れた頬を軽く撫でた。

「オレは遠くからでも見惚れてたけど。すげえキレイだなって思って」

「・・・え?」

ポカンとする私に、綾部くんは「ほんと鈍感だな」と言って、囁くような声を出す。

「・・・美咲のことだよ」

「!」

耳元に響く甘い低音に、思わず身体が震えてしまった。

私は言葉にならない声を出し、一気に頬を熱くした。
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