秘密の記憶は恋の契約
(・・・すごい反則・・・)


「かわいい」って言ってくれることは、何度も何度もあったけど。

「キレイ」だなんて褒められたのは、今が多分初めてで、私は完全に反撃能力を失ってしまった。

「・・・秋になったら、また鎌倉に行くか」

硬直状態の私の手から、彼が雑誌を取り上げる。

見開いたままだったページには、新しいカフェがオープンしたという鎌倉の記事が載っていた。

「ここも。また行ってみようか」

左上の片隅には、綾部くんと行ったお寺の写真が載っている。

懐かしさがこみ上げるような想いで、私は「うん」と頷いた。

「今度は紅葉か」

「・・・うん。そうだね」

四季が彩る秋の鎌倉。

きっと今度は、黄色やオレンジに染まった古都の町が、私たちを迎えてくれるに違いない。

初デートの思い出の場所。

綾部くんはあの時、紫陽花以外の花には興味がないと言っていたけど。

それでも、多分。

次の季節に咲く花々を、彼はきっと、私と一緒に眺めてくれる。

秋色に染まる鎌倉の、空や花や町の変化を、私はまた、綾部くんと一緒に感じたいと思った。







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